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「そう。わかっているのならば、いいわ」
セシリアはエベルレイの気持ちを知っているはずだ。だって、同僚として長い時間を過ごしていた相手であり、友人なのだから。
しかし、セシリアはきれいな笑みを浮かべるとそこで会話を打ち切ってしまう。
多分だが、彼女はエベルレイの長々とした愚痴に付き合いたくないのだろう。
自分ではさっぱりとした性格だと思っていても、愚痴は一度出てしまえばとめどなく溢れ出てしまう。それは、エベルレイとて同じことだった。
「だけど……その」
けれど、ここで易々と引き下がってしまうのはよくない。
ストレスが溜まってしまえば、いつ爆発するかわからなくなってしまうのだ。ならば、少しくらい愚痴に付き合ってもらってもいいじゃないか。
そう思ったエベルレイの気持ちを今度は汲み取ってか、セシリアは「なによ、はっきりと言いなさい」と冷たい視線を向けながら言う。
さすがはクールビューティーというべきか。彼女の言動や態度は冷たすぎる。触ったら低温やけどしてしまいそうだ。
「まぁ、この際相手が二十一歳だとか貴族の令息だとかいうのは、放っておいてさ……」
「そうね」
「その人、どうして特殊部隊なんかに来るのよ……」
肩を落としながらそう言えば、セシリアは「知らないわよ、そんなこと」と言いながら髪の毛を弄る。どうやら、枝毛か何かを探しているらしい。きっと、エベルレイの煮え切らない態度にしびれを切らしたのだろう。
「そもそも、異動は遅かれ早かれ希望通りになるわけじゃない。……二十一歳だったら、もっと前線で戦いたいんじゃないの?」
配属先を選べない新人騎士ならばまだしも、相手は団長に選ばれたほどの人間なのだ。人望もあり、実力もある。つまり、こんな言い方は悪いが辺鄙な裏方に収まるような人ではないような気がするのだ。
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