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「そこら辺の事情は知らないわよ。もしかしたら人前に出るのが嫌な人なのかもしれないじゃない?」
セシリアのその言葉は正しい。前線で戦い、人と嫌でもかかわる騎士団の部隊とは違い、特殊部隊は魔物退治に精を出しているところだ。関わるのは上司や部下、事務官だけでいいし、気楽と言えば気楽なのだ。……仕事はハードだが。
「まぁ、そうかもしれないけれどさぁ……」
がっくりと肩を落としながらエベルレイが書類を書類を手繰り寄せていれば、不意にセシリアがぽんっと手をたたく。
そして、彼女はまた一枚の紙を魔法で取り出してきた。
「これ、アリク・ウォルジーの履歴書ね。一応、チェックしておいて」
「はぁい」
「じゃあね~」
それだけの言葉を残して、セシリアは颯爽と事務室を立ち去っていく。
そんな彼女を恨めしく思いながらエベルレイは新しい団長の履歴書を見つめる。
(アリク・ウォルジー。ウォルジー伯爵家の三男で、約三年前に入団、か)
そこに書かれているのは可もなく不可もなくといった経歴。特別輝かしくもなければ、特別醜くもない。
ただ、あえて言うのならば若いだけあって経験不足感が否めないだろうか。
(こりゃあ、私がいろいろと教えないといけないかもなぁ……)
現在の団長が出世してしまう以上、彼の面倒を見ることが出来るのはエベルレイだけとなる。……嫌だ。嫌すぎる。
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