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ちょっと聞き捨てならない言葉があったような気がするものの、エベルレイは現実逃避とばかりに頷いた。
すると、彼は「ありがとうございます」と言ってにっこりと笑うと、また一歩エベルレイの方に近づいてくる。
……あ、何となくまた嫌な予感が――……。
「エベルレイさん」
どうしてか、彼はエベルレイの元に跪いた。その仕草は流れるような美しいものであり、まるで王子様がお姫様にプロポーズをする際に取るような行動で……。
(……あれ、どうして――)
どうして、アリクはエベルレイのような嫁き遅れ事務官に跪いているのだろうか。新しい団長として挨拶に来たのならば、跪く必要などなくて――……。
「俺、貴女が好きです。ずっと、ずーっと片想いしてきました。なので、どうか俺と結婚を前提に付き合ってくれないでしょうか?」
真剣な面持ちで、きれいなまなざしで。アリクは突拍子もなくそんなことを言う。
……それに、エベルレイの頭が真っ白になる。
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