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どうして、自分は新しい団長に告白されているのだろうか。それも、先ほど知り合ったばかりのような人に。
(アリク様は、きっと女性に苦労されないだろうに……)
伯爵家の三男とはいえ、騎士団長になるほどの実力者で人格者ならば、ぜひうちに婿入りに……という打診をもらっていてもおかしくはない。
それに、エベルレイは跡取り娘ではない。ついでに言えば、アリクよりも年上。
貴族の男性は守ってあげたくなるという理由から年下の女性を好む。もちろん、年上が好きという男性もいるがそれは少数派。
(……もしかして、アリク様は年上が好みなのかしら?)
そう思ったら、一つの可能性が思い浮かんだ。
アリクは年上が好み。だが、二十一歳ともなればなかなか年上の女性との出逢いはない。
そして、偶然にも異動した部署の事務官が年上だった。それを聞き付けたアリクは、逃がさないようにエベルレイに告白している。
そう考えれば、いろいろとつじつまが合うような気がした。……ということは、アリクはエベルレイが好きなのではない。
「……あの、一つだけ、お尋ねしてもよろしいでしょうか?」
だからこそ小さく手を挙げてそう問いかければ、彼はその精悍な顔立ちを嬉しそうに崩して「はい」と言ってくれる。
「……アリク様は、その……年上の女性が、お好みなのでしょうか?」
こういう話題はデリケートなものだ。そう思うからこそ、エベルレイが少しためらいがちにそう問いかければ、アリクは「いえ、そういうわけではありません」とエベルレイのことをまっすぐに見つめて言ってくる。
「俺、年上とか年下とか、そういうの特に気にしませんから」
「……そう、ですか」
じゃあ、どうしてエベルレイなのだ。
(こんな可愛げもない絶対零度の女を好きになる要素って……ある?)
自分で言っていて虚しくなってしまいそうだった。
けれど、それは真実。覆すことのできない事実なのだ。
そのため、エベルレイが虚しくなったところで解決するわけではない。
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