まるで忠誠のキスのような

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「こんなことを言っては何ですけれど、俺は将来有望です」 「……はい」  アリクが淡々と表情一つ変えずにそう言う。  それは、エベルレイとて知っている。むしろ、こんな若い年齢で騎士団長になるのだから将来有望ではないわけがない。 「稼ぎも、その……身分も、いいです」 「……はい」  それも間違いないことだろうな。  そう思いながらエベルレイはこくんと首を縦に振る。  エベルレイのそんな態度を見たからだろうか。彼は「……なので、俺と結婚してくれませんか?」と何の脈絡もなく告げてきた。  いや、脈絡はあるのか。自分の有能さや良さをアピールし、求婚する。貴族の男性としては普通の、いたって普通のプロポーズ方法だ。  しかし。 (付き合うから結婚にグレードアップしているんだけれど……?)  先ほど彼は「結婚を前提に付き合ってほしい」と言っていた。  だが、先ほど彼は「結婚してくれませんか?」と言った。……グレードアップだ、グレードアップ。 「そ、その……わ、私、一生結婚するつもりがなくて……」  からかわれている可能性だってあった。  けれど、アリクの真剣な態度はからかいという可能性を確実に潰していく。  真剣な青色の目。真摯な態度。それが、エベルレイの警戒心を薄れさせたのか。はたまた、信じようという気持ちにさせたのか。  それはわからないが、少なくとも彼は真剣なのだ。  そう思いゆるゆると首を横に振りながらそう言うと、彼は「……俺は」と言って一旦顔を下に向ける。
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