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「は、はい」
エベルレイのあまりにも淡々とした発言に、若い騎士が引いているのがわかる。
当たり前だ。騎士にとって女性とはすり寄ってくる生き物。エベルレイのように塩対応。それこそ、絶対零度のオーラを醸し出す女性などいないだろうから。
特に彼は経験が浅そうなので、そう思うのも当然なのかもしれない。
「えぇっと、エベルレイさん……」
「終わったら速攻で出て行ってくださいませ。私は今から昼の業務に当たりますので」
淡々とそう告げれば、騎士は少し困ったように表情をこわばらせるものの、すぐに「はい」と言って事務室を出て行く。
そんな彼の後ろ姿をちらりと見つめて、エベルレイは「ふぅ」と息を吐いた。
(……本当、ここに配属されて最悪だわ)
ここ二年、ずっとずーっと思っていることを心の中で零す。
エベルレイは男性が嫌いだ。違う。大嫌いと言っても過言ではないほどに嫌いだ。嫌悪感を持っている。いや、憎悪に近いかもしれない。それほどまでに、嫌いなのだ。
だからこそ、ずっとずーっと騎士の男性たちとかかわるこの騎士団の事務官という仕事は地獄でしかない。切実に王宮勤めの事務官に戻りたいと思うが、出世したと考えるとなかなか言い出しにくい。
それに、給金は上がっているのだ。また前の給金に戻るなんてやっていられない。
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