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手酷くフラれてしまったエベルレイを、両親は慰めてくれた。だが、新しい婚約が望めない以上、エベルレイの人生の選択肢は明らかに狭まってしまった。
働くか、修道院に行くか。
その二択に気が付いたエベルレイは……王宮で事務官として働く道を選んだのだ。
もちろん、事務官になるためにはテストがある。が、元々優秀なエベルレイは一発合格。それどころか、満点合格だった。
その後、王宮の事務官として経験を積み、王立騎士団特殊部隊の専属事務官となったのだ。
……まぁ、幸せかと言われれば答えは別問題なのかもしれないが。
(……男なんて、本当にバカな奴らなのよ)
失敗した紙をくしゃっと丸めながら、エベルレイはそう思う。そのままゴミ箱にくしゃくしゃになった紙を投げ込み、また新しい紙を手繰り寄せた。
(この後は、預かっている経費の整理をしなくちゃね。……その後は……)
心の中でこれからのスケジュールを立てていると、不意に事務室の扉がノックされる。
それに驚いてエベルレイが「はい」と返事をすれば、顔を出したのは王宮の事務官時代の同僚であるセシリアだった。
「エベルレイ。今、少しいいかしら?」
一言で言えばクールビューティーであるセシリアは、その口元を少しだけ緩めながらエベルレイにそう声をかけてくる。
なので、エベルレイは「どうぞ」と言って目の前の椅子に視線を向ける。すると、セシリアは「失礼するわ」と言ってその椅子に腰を下ろす。
「今度の人事異動、聞いているかしら?」
セシリアは淡々とそう告げてくる。
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