2449人が本棚に入れています
本棚に追加
狭い路地裏で座り込んでいた僕の目の前に強い光が浴びせられた。
まぶしっ
暗所になれきった眼球がパニックを起こす。
懐中電灯か。
「君1人かな?何歳こんな夜中までこんな所にいるなんて、親子さんはきっと心配してるよ。」
やばい。警官だ。
僕の目に不躾にライトを浴びせて矢継ぎ早に話しかけてくる若い男から逃げるように無口で立ち上がって反対方向を向く。
めんどくさいのに捕まってしまった。
「親子さんは?一人?もう12時過ぎてるよ?ほら子供は家に帰る時間だぞ。家までなら俺が送ってってあげるから。ほらこっち向きなさい。大人相手なんだからシャキッとして。話聞きなさい。礼儀だぞ。ほら行くよ」
礼儀知らないのはどっちだよ。お前が敬わなけれならない大人であるようには見えないけど。
と思ったが、言うとめんどくさいことになるのは目に見えてるので黙る。
無言で立ち去ろうとすると、馴れ馴れしく男は僕の肩を掴んで男の方を向かそうとしてくる。
うざい。
思わず振り払うと男は笑って、
「ほら行くぞ夜は怖くて暗いし危ないからなー。一緒に家まで行ってあげるから。」
かまちょかよ。
今時夜は怖いって子供か。
お前は僕より10年も生きていないだろうが。
もちろん口には出さないけどね。
「夜間一人の少年を保護。家まで送り届けます。必要でしたら署に。はい。了解です。」
トランシーバーに向けて小さな声で話している。
16歳は果たして少年と言えるのか、とか考えてしまうくらいには気持ちにゆとりがあった。
つか単純にめんどくさい。
なんなんだこの警官。
無視しててくれよ頼むから。
全身全霊で祈ったけど、叶うわけもなかった。
最初のコメントを投稿しよう!