薔薇の花束を最愛なる君に

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 ートントントンー  白く無機質で消毒の匂いが漂う病室の前。  俺は大きくて両手でないと持ち切れない赤い薔薇の花束を持って立つ。 「はい…」  弱々しい声がした。  ガラリとドアを開けて俺が入りベッドのそばまで行くと、鼻には呼吸器、腕には点滴がつけられた巽の姿があった。 「よ、久しぶり」 「な、何しに来たの?」 「見舞い。体調どう?」  もっと気の利いたことが言えないのか?と1人突っ込んでしまったが、何より巽の体調が心配だったから仕方ない。 「絶好調」  無理して笑う巽が痛々しかった。 「あ、そうだ。見舞いって言ったら花だろ?だから今日は花束持ってきた」  背中に隠し切れていなかった薔薇の花束を巽に見せた。 「すごい本数だね」 「101本ある」 「そんなに?高かったんじゃない?」 「まあな」 「あはは、無駄遣い。それにこんな本数どこに飾るの?花瓶あるけどこれじゃあ無理だよ」  またあははと笑ったが、か細い声だった。 「今度、新しいの買ってくるから大丈夫」 「いいよ、そんなの…。でもありがとう。部屋の中が明るくなったよ」 「だろ?でさ、実はもう7本、別に持って来たんだ」 「?」 「101本の薔薇の意味知ってる?」 「知らない」 「じゃあ調べて」 「自分で?」  ぶつぶつ文句を言いながら、本数の意味を巽が調べると、希望が消えていた瞳に光がさし、涙が滲み出る。  101本のバラの花束。  ーこれ以上ないほど愛していますー 「それにさ、7本足してみて」  次は108本の薔薇の花束の意味を調べる。  108本の薔薇の花束。  ー結婚してくださいー 「……」 「これが俺の気持ち。巽の返事は?」  希望の光りが宿った巽の瞳から澄んだ涙が溢れる。 「……せっかく嘘をついてまで酷い方法で別れてあげたのに…本当にバカなんじゃない?」  巽は泣きながら嬉しそうに笑う。 「名演技に騙されたよ。で、巽の答えは?」 「答えはもちろん……『YES』だよ」    その声がひどく優しく響いてた。
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