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『一口ちょうだい』 和馬視点
「一口ちょうだい」
唐揚げを揚げていたら、君はいつも笑顔でビール片手にやって来る。
「もうすぐできるから待ってて」
そう言うと、
「わかった…」
少し悲しそうにするから、
「一つだけだよ。熱いから気をつけてね」
って揚げたての唐揚げをフーフーして食べさせてあげと、君はハフハフ言いながら嬉しそう食べるんだ。
そしてビールを流し込むとCMみたいにプハーって、いい顔をして、もう「もう一口ちょうだい」って言うんだ。
「そんなに食べたら、晩御飯のおかず無くなっちゃうよ」
って言ったら、
「じゃあ、やめとく」
しょんぼりしながらコンロの前から退散する。
キッチンのテーブルに座っている姿は、大型犬が『待て』をさせられているみたい。
もう、本当に君は可愛い。
僕は小鉢に唐揚げ二つと、小さな銀皿にお漬物、白い小皿に切ったレモンと岩塩をのせたものを君の目の前に置いてあげると、キラキラした目で「いいの?」
僕を見上げる。
「だって食べたいんでしょ?」
「うん!」
元気な返事が返ってくる。
「どうぞ召し上がれ」
「いただきます」
丁寧に両手を合わせて言い、岩塩を少量つけて唐揚げを食べる。
「美味しい?」
聞くと、君は必ず
「世界で一番美味しい。もう和馬が作ってくれる料理以外食べられなくなってるよ」
と言ってくれる。
その言葉が聞きたくて、苦手だった料理を勉強したんだよ。
明日は2人とも仕事がお休み。
朝ごはん食べたら、家からちょっと遠いけどいろんな珍しい商品が置いてあるお店に行かない?
この前もらった美味しいワインに合う料理を作るよ。
エビ、タコ、きのこ、ブロッコリー、プチトマトが入ったアヒージョ作ろ。
今の時期だと牡蠣もいいかな?
メインは君の大好物、ローストビーフ。
ソース作り自信ないけど、頑張ってみるよ。
でもシーザーサラダのドレッシングは市販ので。
あそこのお店のドレッシングは最高なんだ。
お店の帰りにパン屋さんに寄ってフランスパン買って。
2人だけの豪華な宅飲み。
また明日、僕が料理をしたら君はワイン片手に「一口ちょうだい」とって言うんだろうな。
なんだかんだ言いながらも僕は君に『つまみ食いセット』を差し出す。
そして僕は幸せそうに『つまみ食いセット』を食べる君を見ながら、ワインを飲む。
僕は、僕が作った料理を幸せそうに食べている豪を見るのが大好きなんだ。
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