『一口ちょうだい』 豪視点

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『一口ちょうだい』 豪視点

俺が和馬と出会って10年。 一緒に住みだして、もう7年。 3食は無理だけど、朝昼晩、必ずどこかで和馬の手料理を食べている。 7年間といえば、体の中の細胞が全部作り替えられる時間。 だから俺の体のほとんどは和馬の料理でできている。   はじめはお世辞にも美味しいといえなかった和馬の料理も、今では一つ星レストランのオーナーシェフをしている俺より美味い。 本当にお世辞抜きで。 だから和馬が料理している香がしてくると、どうしても一口食べたくなる。 我慢ができないのだ。 揚げ物の時はビール。 煮付けの時は日本酒。 この前のチキンとマッシュルームのトマト煮の時は、白ワインと小皿を持って「一口ちょうだい」と言いに行ってしまった。   一口食べたら、もう一口食べたくて「一口ちょうだい」と言うと、なんだかんだ言いながらも小皿に「つまみ食いセット」を作ってくれる。 まさに料理の神だ。 神の料理、本当はゆっくり味わいたいけど、美味しくて箸が止まらない。 で、つまみ食いをたくさんしいたにも関わらず、普通に晩御飯も美味しくいただく。 だからか…。 俺のお腹周りが最近大きくなってきたのは。 明日は2人とも仕事が休み。 遅めの朝ごはんは俺が作るよ。 そのあと晩御飯の買い物に行こう。 この前もらったワインに合う料理。 君が大好きなアヒージョは必須。 パエリアも作っちゃう? あ、それとチーズも買おうな。 それで一緒に晩御飯作ろ。 明日こそ!明日こそ「一口ちょうだい」は言わない。 でももし言ってしまったら、いつもみたいに「つまみ食いセット」作ってよ。 ご飯ができるまで「つまみ食いセット」で一杯やろう。
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