ボトルメール

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ボトルメール

『結婚してください』   僕が拾った手紙には、この一文だけ書かれていた。 「僕と結婚!?この僕と!?」  思った言葉が口からついて出てしまい、慌てて両手で口を押さえた。  僕が拾った手紙は変わっていて瓶に入っていた。その瓶の外側には『君に宛てた手紙』とだけ記されていた。瓶の中の紙には『結婚してください』と書かれ、宛名も宛先も差出人も書かれていなかった。  僕はいつもは都会に住んでいる。でも春休み、夏休み、冬休みなどの長期休みには祖父母の家で過ごす。 家は海沿いにあって、歩いて3分ほどのところに、砂の上を歩くとキュッキュッと音が鳴る『鳴き砂』と言われる砂が一面広がっている浜辺がある。  初めてこの砂の上を歩いた時、砂が歌を歌っているように聴こえて感動した。だから祖父母の家に来た時は雨の日以外、この浜辺を訪れていた。  毎日6時。訪れる季節によって外気の温度が違う。春はまだ肌寒いけど空気は爽やか。夏はもう日も登り始め空気が暑く蝉の声も聞こえてくる。冬はまだ日は登っておらず、どんなに着込んでもいても外気に直に触れる頬がヒリヒリと冷たい。  そんな季節を肌で感じられる浜辺(ここ)が僕は好きだ。  そんな浜辺に流れ着いてか、落ちていたボトルメール(手紙)。  宛名は書いていなかったけど、多分この手紙の書き方は僕宛だ。だから返事を書くことにした。 『年齢的に結婚は早いので、お友達からにしませんか?』  手紙が入っていた瓶に入れ、瓶があった場所に置いてその日は帰った。 次の日行くと 『本当に友達になって結婚相手候補にしてくれるの!?』  と返事が書いてあったから僕は、 『いいよ』  と返事を書いた。 それから僕と顔の知らない友達との手紙のやり取りが始まった。 天気や好きな本など、たわいもない話のやりとりが楽しかった。でも親しくなるにつれ、どうしても聞きたいことがあった。 『僕には欠点があるけど、それでもいいの?』  勇気を振り絞って書いてみた。  次の日浜辺に行くと手紙が入った瓶はなかった。やっぱり欠点がある僕は嫌なんだ。僕はくるりと後ろを振り返り帰ろうとすると、そこには誰かがいて点字で書かれた紙を手渡された。 『目が見えないことは欠点じゃない。それは君のチャームポイントだよ』って。 そして彼は言った。 「俺は男だけど結婚してくれる?」 そんなの返事は決まってる。 「お友達からって言ってるじゃん」
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