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カラスのような大きな嘴。
まるで、人間の事を全てわかっているかのような、こちらを見るルビーのような目。
鳥はハンカチを加えて、ポイと遼の前に落とした。
「……これで、なにをしろっていうんだ…?」
ハンカチを拾った途端、空気が変わった。
張り詰めてピンとした物が、なくなったと言うか。
遼は天井を見つめ、おかしな空気に首を傾げた。
そして彼が白い鳥を再び見ると、そこには何も居なくなっていた。
「は?……あれ?」
どこを見ても白い鳥はいない。
何だったのか?鳥の幽霊でもみたか?でも、手元を見ると、ハンカチは握ったままだ。
「……」
遼はクシャリとポケットの中にハンカチを押し込むと、半グレ仲間の待つ、暗いアパートへ帰った。
***
アパートの部屋は煙草の煙と、酒の匂いでいっぱいだ。しかし、金はあっても必要最低限の生活用品と、小さなテーブルしかない。
逃げる様な事が起きた時に、何かを残さない為だ。
部屋には3人。
他にも数グループあるが場所は知らない。
部屋に長く居る遼でさえも、幹部の住んでいるところは知らなかった。
ただ、その幹部とやらから仕事の連絡はスマホにやってくる。
「遼。お前に仕事だ。でも、電話にでなかっただろ?ジョーカーさんが怒ってたぜ」
ジョーカーとは幹部のことだ。本名は知らない。
家に戻っている間、スマホの電源を切っていた。
これは会った時に一発殴られるなと舌打ちをする。
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