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「お前は不幸な存在だった。その生活だったからこそ、優しさが消え、人を人とも思わない生活に身を染めていた。だが、しばらく1人で考え、時に菜々子という少女の存在で、人間の幸せを少しは感じる事ができただろう?」
大きな鳥は低い声で、言葉を話した。
遼はかなり驚いたが、自分を食べたり、生き返ったりと不思議な体験をしていたせいで、鳥が話す事を不思議に思わなかった。何せ"最初から不思議な鳥"だ。
「これから、人と離れて過ごしても、関わる人物は必ず出てくる。その時に、この日の事を忘れるな」
日本語を話す嘴をぼんやりと見つめ続けて、ハッと気がつくと、もう鳥の姿はなかった。
それから、ハンカチの色も変わることもなく、ハートの折り紙と一緒に小さなお菓子の缶に入れて置いてある。
***
白い鳥を見なくなってから、もう何十年も経った。
遼は"山の無口な爺さん"として通っていたが、子供達には懐かれて、木で小さな椅子やテーブルを一緒に作ったり、男の子には車や飛行機を、女の子にはままごとの道具などを作ったりして、遊んだりした。
そのお礼に、農家の色々な家族から野菜や魚、料理など食料を貰ったり、老人ではツラいだろうと屋根の手直しなども手伝ってくれたりもした。
たまたまある文章を読んだ。
天使は人間の手助けをするために、色んなメッセージを送ってくれたりするらしい。
白い鳥は、ジョーカーが言う通り、天使だったのかもしれない。
確かに、今、遼は幸せな一生を送っている。
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