レコーディング

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レコーディング

1968年の夏。 その日マーキュリーレコードのスタジオでは、人気ロックバンド・ペガサスの新曲レコーディングが行われていた。 ペガサスは5月にデビューして、すぐに人気爆発した、トップアイドルグループだ。 キーボードのエディ萩原と、ヴォーカルのスティーブ西野が、人気を二分する存在だ。二人はともに17歳。 肩まで髪を伸ばした、女の子の様に可愛らしいエディと、どこか陰のある野生的なルックスのスティーブは、好対照だった。 ところが今日は、肝心のヴォーカル、スティーブの体調が最悪だ。 昨日から39度近い高熱を出し、無理を押して、スタジオに連れてきた。やっと先程レコーディングが終わったところなのだった。 「スティーブ、大丈夫か?まだ熱があるんだって?」 休憩室のソファに座り込んでしまったスティーブに、いたわるように近付いて来たのは、作曲家の水島滋之だ。 「はい・・・」 水島滋之は30歳。今一番売れている作曲家だ。作詞家の長谷部晃とのゴールデンコンビで、次々ヒット曲を出している。ペガサスのデビュー曲も手掛けて、大ヒットさせた。今、その第二弾を吹き込んだところだ。 水島はいつも高級ブランドのスーツを颯爽と着こなしている、ダンディな紳士だ。スリムな体つき、柔らかい物腰、切れ長な優しい目。 何よりその手から生み出される華麗な楽曲は、エディやスティーブ達、若きミュージシャンには、あこがれだった。
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