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甘い旋律※
ペガサスの今度発売のLPは、全曲オリジナルの予定だ。
ヴォーカルのスティーブだけでなく、人気のエディのソロ曲を取り入れる話が出ている。その作曲を水島滋之に依頼していると、エディ達は事務所から聞かされた。
ある日、ペガサスが出演しているライブハウスのステージに、水島が作詞家の長谷部晃と連れ立って、見学に来ていた。
水島の曲の多くは、長谷部晃が作詞をしている。二人は、大学のジャズバンドで一緒だったそうで、それ以来のコンビだ。
ペガサスの曲は、今後もすべて、この二人に委ねられる計画になっている。
ステージが終わって、まだ一人客席に残っていたスーツ姿の水島を、エディは見つけた。考え事をするように、腕組みをしている。
エディが近づくと、水島が気付いて声を掛けてきた。
「やぁ、エディ 今日のステージ良かったよ」
切れ長の優しい目が、エディを捉えた。
「ありがとうございます──」
エディは、にっこりと微笑んだ。
水島は誰にでも褒めるタイプだった。歌手をけなす事はしない。
むしろ長谷部の方が厳しく、レッスンでも、コーラスを入れるだけの時でも、歌詞の意味を理解していない、情景描写が出来ていない、と何度も怒られた。
それに比べて、水島はいつも穏やかで、この優しさが、エディは好きだった。
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