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翌日、車で連れて来られたレッスン室は、広いマンションの一室だった。エディは初めて訪れる場所だ。
水島は結婚していて、一戸建ての家に妻子と住んでいる。
事務所は別にあり、そこのピアノがある部屋では、ペガサスのメンバーと一緒に、レコーディング前のレッスンを受けた事がある。
この部屋は、プライベートなレッスン室兼仕事場らしく、デスクの上に楽譜や書類が雑然と積まれている。グランドピアノの他には、応接セットがあり、作曲は主にここでしていると、水島はピアノの前に座りながら、言った。
「最近君達の曲とアレンジで忙しくて、帰れない日もあるよ」
「先生、僕のソロ曲は・・・?」
頷いて、水島が弾き始めたのは、バラード調の曲だ。
「これだよ、どうかな──?」
エディはピアノのすぐ側に、楽譜を覗き込むようにして立った。
「ちょっと舌足らずな甘いヴォーカルが、君の持ち味だよ──それに合わせたんだよ」
「僕、好きです──このメロディ」
うっとり水島を見つめながら、曲を聞いていたエディが、だんだん体を近付けて、水島の腕に擦り寄るようにした。
水島がピアノを弾く手を止めた。
「そんなに近寄ると弾けないよ──困った子だな」
そして、手でそっと髪を弄ぶようにされた。顔が近くに迫った。
「先生・・・」
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