愛犬と虹

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「星宮先輩!星宮先輩!大変です!」 民俗学部の部長、星宮月渚が、部室でコーヒータイムを楽しんでいると、部員の文庫瑠璃が飛び込んで来た。 「騒々しいな、子泣きジジイでも出たか?」 「死んだ愛犬のラムが幽霊になって僕の部屋に現れたのです!」 「確か瑠璃が幽霊を視る時は、半透明の人形(ひとがた)に見えるのだったな?犬はどういう風に見えるんだ?」 「ラムの場合はビーグル犬なので、膝丈の小さな半透明の姿に見えます」 「で?骨っこでもセガミに来たのか?」 文庫瑠璃の不思議な話し。 「庚申の守護」 以前、話した庚申塚の神隠しの怪異があったでしょう?あの続話になります。 ある日、ラムが枕元に現れて以来、僕はラムの幽霊と毎日散歩に出掛けていました。 生前は僕が面倒くさくて散歩をサボってばかりいたので、それを恨んだラムに祟られると思ったからです。 そして先日、ラムの幽霊とアパートの近所を歩いていると、ラムが何時もの散歩コースとは違うコースを行こうとします。 そして辿り着いたのが、庚申塚の怪異で撮影した給水タンクと山童の撮影ポイントです。 「この写真、覚えていますか?」 1e67b5cb-77cb-4a5e-a61f-ff80e0154a38 5482f7e7-e0dc-42de-94a8-dc898cb6ecee 給水タンクに着くとラムの幽霊が仕切りにタンクを気にしています。良く見ると、タンクの錆びたビスが腐食のせいで水漏れを起こしているのです。 ラムが報せてくれなければ、大変な事になるところでした。 僕は給水タンクを直している作業員を見て思いました。秘密基地の庚申様が写真に撮れたのは、「この給水タンクが壊れないように守っていたのだぞ」と云うメッセージだな、と」 「かもな」 「バナナ、御供えしておきました」 「また何かあった時は守ってくれるだろう」 「虹が見えました」 「虹?」 「庚申塚に続く小路の上空に虹が浮いていたんです」 「幸せの訪れでも感じたか?」 「…はい。ラムも庚申様も僕から離れず守ってくれると思います。そう思った刹那、空が虹色に 染まりました」 「良かったな。愛犬との愛を感じる」 瑠璃は幸せそうに微笑んだ。                  了
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