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理想の彼氏
最近できた私の彼氏は、とても気が利く優しい人。
私が帰宅したと同時に毎回必ず無事を確認する電話が掛かってきたり、寝る準備が終わった頃になるとお休みの電話が掛かってきたりと、少しばかり心配性なところはあるけれど。
私が密かに欲しいと思っていた鞄や服など、突然サプライズでプレゼントしてくれたり、私の好みまで熟知したなんとも気の利く優しい人なのだ。
そんな彼との出会いは、私がしつこいナンパに困っていた時に助けてくれたことがキッカケだった。
つい最近も、些細なすれ違いから親友の麻由と喧嘩をしてしまって落ち込んでいると、突然会いに来てくれた彼はただ静かに寄り添ってくれた。きっと気の利く彼のことだから、何も言わずともいつもと様子の違う私に気付いてくれたのだ。
こんなに気の利く優しい彼のことを悪く言うだなんて、麻由はきっと何か誤解しているに違いない。
麻由と喧嘩をしてしまった日から今日で五日目。早く彼への誤解を解いてしまいたいところだけれど、未だ怒っているのか一向に綱がらない麻由の携帯。
「どうして理解ってくれないの……」
一番の親友である麻由に理解してもらえない寂しさから、私はポツリと小さな声を漏らすと溜め息を吐いた。
こんな時に一人でいたら、益々気分が落ちてしまいそうだ。
──でも、私には彼がいるからきっと大丈夫。優しくて気の利く彼なら、何も言わずともそんな私に気付いて慰めに来てくれるはず。
私は俯いていた顔をゆっくりと上げると、私の自宅前に佇む彼の姿を捉えてニッコリと微笑んだ。
「……ほら、やっぱり来てくれた」
どんな時も私のことを一番に気に掛けてくれて、側にいて欲しい時には必ず私の元へと会いに来てくれる。
そんな彼は、まさに理想の彼氏なのだ。
【解説】
彼女が気付いていないのなら、これも一つの幸せのカタチだと言えるのかもしれない。けれど、その強すぎる愛情がいつ彼女に牙を向けるともわからない。
彼女は、以前から自分のことを盗撮・盗聴しているストーカー男と付き合ってしまったのだ。
それに気付いて忠告してくれた親友の麻由。勿論、その時の口論も盗聴していたので彼には筒抜け。
連絡のつかない親友は、果たして無事なのだろうか……?
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