同期

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同期

定時で帰った日から同期の田中が来なくなって三日が経つ、しかも休みの連絡も無い。 事件にでも巻き込まれていないか心配だけど仕事が多すぎて心配している事も忘れていた。 空いた時間に連絡しても電話も取らないし、LINEを送っても未読のままだ。この会社は俗に言うブラック企業で一人いないだけで帰る時間が3時間も変わる。 そんな中、昼に警察から電話があり、同期の田中が亡くなった事を知らされた。どうして何の相談もなく逝ってしまった同期に憤りを覚えた。 心の中で「俺だってここから抜け出したい。」 その日も残業で夜中までかかってふと「何でこんなに頑張っているんだろう」呟いた。 生活の為?、生きる為?、辞めたら死ぬ?考えを巡らせながら机に中に入れていた辞表を取りだした。 この辞表は一年以上も前に書かれたものだった。何故、先に逝ったんだよ。と思い、字が滲んでる部分を指でなぞりながら夏の暑い夜に書いた記憶がよみがえった。 同期の田中と一緒に辞めようと書いたものだ。唯一の同期がこの世から居なくなったのと同時に唯一の絆がこの世から消えた事実を受けとめるにはあまりに時間も心持ちも無さすぎた。 明日、田中の告別式が行われる。心が荒んで行く気がおこらなかった。夢なら早く醒めてくれと願ったが告別式を出たら嫌でもその事実を突きつけられる。今まで息をつく暇も無い仕事が嫌だったけど、 今は唯一この仕事をしている時がこの現実から忘れる。息をついたら現実に引き戻される。正直恐かった、その現実が、、、
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