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「ところで昭、お前金を残してあるのか?」
「会社の株を購入していた」
「全部か?」
「ああ全部だ」
「あんなもん紙屑になった」
植木の嘆きに坂上は笑っている。
「お前は頭が混乱しないのか。もう仕事ないんだぞ。月給貰えないんだぞ」
「しょうがない。また一からやり直しだ。一緒にやろう」
植木は坂上の呑気に怒気が失せて来た。坂上と植木は大学の同期で二人共高校野球の名門校出身で野球で進学したと言っても過言ではない。そして野球好きの社長からスカウトされこの会社に入社して6年が経っていた。
「野球部はどうなるんだろう?」
「決まってんだろ」
「続けるのか?」
「辞めるに決まってるんだよ」
坂上にとっては会社が潰れるより辛い現実である。実はこの二人男同士だが交際している。大学時代から交際が始まり別れたり、よりを戻したりを繰り返しながら既に10年が過ぎた。特に坂上は高校生の時からそれを感じていた。女の尻より男の尻に刺激を受けた。植木は大学時代の学生寮で同室であった坂上と酔った勢いで抱き合い、それからの付き合いである。対象は男女両方であるが、尻穴に挿される快感を覚えたら女だけでは満足出来ずにいた。現在二人は別々に暮らしている。やはり四六時中一緒だと相手の欠点やお互いの価値観の違いが喧嘩の原因となる。殴り合いにはならないが坂上の泣き顔が情けなくて植木の案で別居したのである。坂上は植木の怒りっぽい性格をそれほど気にしていない。むしろ怒られる方が家事もスムーズに運ぶと考えている。
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