7人が本棚に入れています
本棚に追加
「これから千葉まで行く」
「千葉、何しに?」
「会社の野球部を立て直したい会社があるんだ。その社長は実業団野球で一勝したいと願っている。それで俺達の事を知り誘われた」
「一勝ってそんなに弱いチームなんだ?」
「ああ、渡りに船だ、やってみないか?」
「真一がやるなら僕は付いて行くよ」
二人は最寄駅からバスで20分走り牧場に到着した。
「いいところだな」
「でも通えないな」
「寮があるらしい、お前はあの高額なマンションを引き払って寮に引っ越せ」
「真一は?」
「俺は車で通うつもりだ。片道2時間掛かるけどな」
「僕と一緒に寮に住もうよ」
坂上は植木が自分のことを避けているように感じた。
「なんか恐いんだ、お前と一緒にいると。俺はこれからどうなるんだって頭が混乱するんだ。もう俺達も来年30になる。おふくろから孫の顔が見たいって電話が掛かって来る。俺は女も好きだけど昭のことが大好きだから、離れられなくなるのが恐い」
植木は正直な気持ちを吐露した。
「離れなくていいんじゃないの。お互いが好きならそれでいいと思うけど。僕は正月に帰郷して両親にはっきり言うつもりだ」
「びっくりするだろう両親?」
「妹は僕の性を理解してくれている。小学生の時から何となくこうなることを予想していたらしい。だから両親にも誤魔化してくれていた」
話しながら歩いていると会社の入り口に到着した。ログハウスである。中に入ると数人の事務員がいた。
最初のコメントを投稿しよう!