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南は腰を引いてキャッチーミットのすぐ前まで尻を突き出した。キャッチャーは南の尻穴に釘付けである。アンパイヤも姿勢を下げている。花形が投げた。ワンバウンドでアンパイヤの面に当たった。南は振り逃げをした。キャッチャーはボールを見失った。その間に南は2塁まで進んだ。植木は3塁に滑り込んだ。
『6番ファースト一ノ瀬』
「さあ一ノ瀬君、アナウンスされたよ。出番だ」
一ノ瀬はブルペンから出て行った。
『あれ、一ノ瀬選手はバントのようですね、バッターボックスに入る前からバントの構えをしています。グリップエンドを股間に当て、ヘッド部に右手をあてがっています。それにしても短いバットですね、それに一回り細い。ヘッドを押さえる右手が小刻みに上下運動していますがどういう意味があるのでしょうか田淵さん』
『ピッチャーを惑わすつもりでしょう。ほら目の前に蝿が飛んでいれば気になって集中出来ませんよね、その効果を狙っているんだと思いますよ』
『青田さんはこのバント作戦、どう思いますか、ここは犠牲フライが妥当だと思いますが、青田さん、青田さん、また紙が挟まっちゃったんですか?だからトイレットペーパーで拭き取っちゃ駄目なんですよ』
『ついやっちゃうんだ。それで女房に怒られる』
坂上が一ノ瀬に伝授した作戦はモノでバントすることである。坂上も一ノ瀬も特大モノを持ち合わせている。バットよりは短いし太さも足りないが、バントの体勢で身体を前傾すれば目立たない。モノにはメーカーのロゴを手書きで入れた。黄色のスプレーでバットらしく変色した。問題は持久力である。ずっとマックスの状態を維持しなければならない。だからヘッドを握る右手はたえずしごいている。花形が投げた。直球150キロの剛速球。坂上に直球は見逃すように指示された。まともに受けるとカリ部で折れるかもしれないと脅かされた。一ノ瀬はマックスを維持するために右手の動きを早くした。セカンドにいる南が股を開いてピッチャーの花形をヤジる。セットポジションで南の股間が目に入ってしまった。力が抜けてへなちょこボールになった。ワンバウンドツーバウンドで一ノ瀬の前に転がって来た。一ノ瀬はこれぞ狙い球とモノに当てた。
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