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『田淵さん、粘りますね坂上選手、あれ、バットの先が赤くなっていますがどうしたんでしょうか?』
『まさか川下さんの赤バットを真似したんじゃないでしょうね』
もう後がない。坂上は次の球に全神経を集中する。花形がモーションに入る。植木が南に走るようサインを出す。南が走る。球が手から離れた。剛速球がど真ん中に入る。内野が前進する。坂上は握ったモノを水平に倒した。ヘッドをしっかり握り球を捉えた。『グゴッ』と鈍い音がして球は前進してきたファーストの上を超えて落ちた。坂上は滑り込む。ホームは間に合わない。南がホームベースの上にしゃがんだ。ライトが一塁に入る。花形が素手で掴んでファーストに投げる。坂上と野手が当たる。坂上が倒れた。野手のグラブからボールが落ちた。
『セーフ』
一塁塁審が声を上げた。ファーマーズナインが坂上に駆け寄る。うつ伏せに倒れている坂上を植木が抱え起こす。モノは萎んでユニフォームに収まっていた。花形が近付いて来た。
「俺のヤジ許してくれ。二人の愛にエールを送る」
手を伸ばした。植木ががっちり握り返した。
「坂上、さあ行こう」
立ち上がると観客席から拍手が湧いた。
「これで終わりじゃない。これから始まるんだ。俺達の地位を上げて行こうぜ」
植木が坂上をハグした。
「やばい」
「どうした?」
「植木のやさしい声でまた勃ってきた」
「我慢しろ、みんなが見ているぞ。あれがモノだとバレたら失格だ」
「そんなこと言っても生理現象だよ」
みるみるマックスになって行く。
「よし写真撮影が始まる。バントの構えで誤魔化せ」
カメラマンが坂上の前に集まった。坂上はモノをバットにしてバントの構えで写真に納まった。その記念写真はファーマーズの社長室に永遠に飾られた。
了
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