第二章

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カルボナーラサラダ丼の食材を冷蔵庫にしまい、深く溜息を吐く。この広い部屋にまた一人になってしまった。一人なら食事は何でも良かったから、炊いたご飯にレトルトのカレーでもかけようと用意をしている時に、部屋のインターホンが鳴る。 モニターにはピザ屋さんのような人が立っていた。 「はい… 」 「チェリーズピザで〜す」 「頼んでませんが… 」 「… 東城様、のお宅ではないですかぁ?」 東城さんが僕の為にピザを注文してくれていた。 マンションのエントランスのロックを開けてから部屋に着くまでの時間が長く、ここが15階である事を実感する。 「… いくら、ですか?」 玄関を開けてピザを受け取る前に財布を広げた。 「お代は頂いてるんで大丈夫でーす!毎度ぉ〜」 帽子を外して頭を下げると、ピザ屋のお兄さんがニコッと営業スマイルを残して去って行く。 にしたって、こんな大きなピザ、直径が40cmはありそうなピザで一人で食べきれないよ、と思って悲しくなる。 物音ひとつしない部屋、何か音が欲しくてテレビを点けたが、大きすぎるテレビの迫力に驚いて直ぐに消した。 また部屋の中が静まり返る。 突然、寂しさが突風の様に襲ってきて、悲しくて寂しくて、気が付いた時には東城さんに電話をしていた。 「どうした?茉紘?」 しゃくり上げてヒックヒックと泣くだけの僕に、どうしようもなく心配そうな声がした。 「仕事は終わったから、今、今すぐに戻るから」 東城さんの言葉に安心して電話を切り、部屋の隅っこに膝を抱えて座り込んで待っていた。まるで留守番が出来ない、小さな子どもみたいで自分が情け無い。 「茉紘、茉紘?」 部屋が広過ぎて、僕が見つけられない東城さんの僕を呼ぶ声がして、立ち上がって走り寄り、思わず抱き付いてしまう。 「東城さん… 東城さん… 」 「どうした… ?」 東城さんも僕を抱き締めて、頭を何度も撫でてくれた。 頭から、背中、腰を撫でられ、どうしてか僕の下半身がおかしい。 朝起きた時に、勃起している状態と同じになって戸惑う。思わず腰を引いて、東城さんに悟られないようにした。離れようとしたのに、東城さんが離してくれなくて、僕のアソコはムズムズする。 僕はオナニーが嫌い、と言うか悪い事のような気がしてしまって出来なくて、中学や高校の時の仲間と話しをする時は合わせて、それらしい事を言っていた。皆んなは悪い事をしているとか思わないのかな、楽しそうに話しをするから不思議だった。 嫌だけど勃起はしてしまい、皆の様にオナニーが出来ない、というより欲情しないから最後までいかなくて、ただ罪悪感だけが残るのが凄く嫌で、我慢をしていると朝によく下着を汚した。ばあちゃんに知られたくなくて隠れてトランクスを洗っていたけど、多分ばあちゃんにはバレていただろうな、と思う。 「茉紘」 耳元で東城さんが囁き、そっと僕のアソコに手が触れて、大きくビクンと身体が動いてしまってばつが悪くなる。 逃げたいけど、逃げたらまた一人になってしまうと思って、我慢して東城さんに触られるままにした。 キスをされる。涙がこみ上げてきたけど必死にこらえた。 「ねぇ、茉紘… ごめん、我慢出来ない」 こみ上がる涙を呑み込むように、喉がゴクっと鳴る。 「口、開けて… 」 目を瞑って小さく開けた口に、東城さんの舌がぬるりと這入ってきて… 正直、気持ちが悪かった。 東城さんの様に大きな僕ではないけれど、それほど小さくもない僕を簡単に抱き上げて寝室へ運ぶと、大きなベッドに静かに寝かされた。 怖い、助けて… 目を瞑って唇を噛んだ。
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