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午前中は春のような日差しの中、この区画を2人で歩いて隈なく探索した。
そして一緒にご飯を作って、一緒に食べる。
お互いのスマホで写真もいっぱい撮った。
バッテリーの持ちは良くても、メモリはいっぱいになってしまい、パソコン本体に移動させた。
その日は仕事をせず、青山君との時間を大切にした。
昼の暑さも和らぐ頃、青山君は自転車でシズさんを迎えに行った。
私はその間にベッドで少し眠った。
目を覚ますと、目の前に青山君がいた。
夕食のいい匂いがしている。
「あ、寝顔見ているのバレちゃいました」
ベッドに肘をついて私を眺める青山君が、少年のような屈託のない笑顔を向ける。
外は薄暗くなっていた。
間もなく、夜だ。
お別れの時間が迫ってきている。
「先輩?」
涙が枕に沁みていく。
変だな。
人間界へ戻れるのに。
もう充分妖精界も堪能したのに。
ただただぽろぽろ涙がこぼれてくる。
青山君は私の頭をそっと撫で、
「ご飯、食べましょう」と言って部屋を出ていった。
部屋を出ると、キッチンで青山君とシズさんが夕ご飯の支度をしてくれていた。
私は洗面所へ向かい、顔を洗う。
ツルスベ肌。
この水で顔を洗うのも最後か。
このクレンジング・洗顔要らず、化粧水美容液乳液要らずの究極のオールインワン。
30歳目前の荒れ放題だったこの肌に透明感が出てきた気がする。
自宅の水道管と妖精界の水源を直結して欲しいと本気で思う。
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