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食後、シズさんは大きな2つの袋に持ってきた荷物を詰める。
主に妖精界へ来た人間の私物だ。電子機器類なども多くある。
「妖精界へ来た時は水の中でしたが…大丈夫ですかね。水の中に落ちても妖精界では壊れずに済んだものも、向こうではいかがでしょうね」
私もそれが心配で、パソコンにしっかり防水対応を施した。
私は来た時のスーツに着替え、鞄も靴も準備した。
「やっぱり、先輩はスーツがよく似合います」
シズさんは、誰かが置いていった服を借りているので少し時代遅れでブカブカだ。片方の袋をよいしょ、と背負う。
私ももう片方を背負った。
結構重いな。全部返却できるのかな。
青山君は自分の鞄のベルトで私とシズさんを繋げた。
「絶対にシズさんを離さないでくださいね」
私はシズさんの手をしっかり握る。
私が取り残されて、シズさんだけが人間界に戻ってしまっても非常に困る。
70年も妖精界に居たシズさん。
私は人間界でシズさんの面倒を最後までみると、青山君と約束したのだ。
「行くぞよ。後のことは…頼んだぞ、ユウ」
「お任せください」
私と繋がったシズさんは、扉を開けて夜空を見上げる。
青山君は、少し離れて私達を部屋から見守る。
私と目を合わそうとしない。
シズさんは、大きく息を吸い、暗闇に向かって叫んだ。
「ワシゃ、妖精界に来て良かったぞぉーぃ!」
その瞬間、突風が私達を覆い、暗闇に吸い込まれていった。
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