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ドシャッ。
急に風が止み、私達は2人して転倒してしまった。
そこは私と青山君とで池に落ちた時の公園内だった。
シズさんと2人、顔を見合わせて安堵する。
良かった、離れなかった。
邪悪な妖精にも捕まらずに済んだらしい。
ただし落ちた時から季節が変わり、雪がチラチラ降っている。
池の中ではなく、芝生の上で助かった。
「ここが…人間界かえ?」
季節を想定してそれなりの格好をしてきたシズさんだが寒そうだ。
私も夏のスーツなので寒い。
まさか雪まで降っているとは思わなかった。
携帯の通知音がけたたましく鳴っている。
日付を見ると11月23日の20時だった。
「そうですね。とりあえず、私の家に帰りましょうか」
タクシーを捕まえ、荷物と共に乗り込んだ。
「今日は寒いですねぇ。この秋一番の冷え込みらしいっすよ」
タクシーの運転手さんのお喋りに、私達は適当に相槌だけ打った。
放心状態、ということもあるけれど、人間界の空気の悪さに酔いそうだからだ。
私よりずっとシズさんの具合が悪そうだ。
一人暮らしのマンションに着き、タクシーの運転手さんが荷物を運ぶのを手伝ってくれた。
郵便受けに沢山郵便物が投函されていた。
とりあえずそれは後回しにして、部屋の鍵を開ける。
「…ミソノよ…」
「…はい」
「この部屋の向こうは…異世界か?瘴気のようなものが漂っておる」
いえ、間違いなく私の部屋でございます。
ただ、仕事に追われていたままの状態が4ヶ月も放置されたので、言葉に表す事が出来ないほどになっているだけでございます。
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