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「あっくん……、あっくんが悪い。勝手に死んじゃうんだから……」
泣き続ける彼女に、思わず船木さんは部屋に飛び込もうとするのを皆が引っ張って止める。
「もう絶対、危害を加えたりしませんから、お願いです。もう一度中に入らせてください。忘れものを、忘れものを……」
船木さんが言うのには、不治の病で入院を繰り返す自分を彼女は支えてくれていたが、死期が近づいて自暴自棄になり、彼女の浮気を疑い、また弱っていく姿を見せたくなくて、死の直前の数週間は会うのを拒否してしまったのだそうだ。
「浮気は誤解だったんじゃない?」
千葉さんが言うと、船木さんは肯いた。
「ちゃんとお別れを言うべきだったね。彼女も気持ちの整理がつかないだろう」
石田老人が諭す。
泣いている彼女も、懇願する船木さんも可哀想に思えて、俺はガイドに言った。
「もう一度、入れてあげてください。もし何かしそうになったら俺が止めますから……」
「しかたないねえ。ほんと、悟られないようにしてよ」
そう言うと、ガイドは船木さんが入るのを許可した。
船木さんは部屋に入ると、泣いている彼女の横を素通りして、奥にあるテレビ台の方に向かう。そして、テレビ台の横のキャビネットから何かを探す。
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