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それに俺の会社から退職金や十分な補償が出るだろうし、生命保険金も下りるだろう。おそらく生活には困らないはずだ。
自分も仕事ではそれなりの結果が出せた。
そう思えば、死んだのは残念ではあるが、まだ若い田中を助けられて良かったと思う。
「ん?」
大切なものがないことに気がついた。
それは、趣味の切手収集の、お気に入りのスクラップブックだった。
海外出張に行った際などに、その地その地の切手を買い集めているが、その中でも珍しいものばかりをスクラップしたもので、冗談で妻に「他は金に替えていいが、これだけは棺桶に入れてくれ」と頼んでいたものだ。
突然の夫の死に動揺して入れ忘れたのか、あるいは換金できると踏んで入れなかったのか……。
「はい! 忘れもの、あります!」
俺は慌てて手を挙げた。
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