30人が本棚に入れています
本棚に追加
2.誓約書
現世に忘れものを取りに戻るに当たって、誓約書に持ち帰る品名と、承諾のサインを書かされた。誓約書の文言は次のようなものだった。
一. 申告した品物以外は持ち出さない。
二. 現世に生きる人を傷つけない。
三. 一、二を破った場合は厳重な処罰を受けることを了承する。
これにサインをした者は、四人一組となって、ガイドとやらを待った。
やがて、俺たちの組には、黒地にオレンジの彼岸花の模様の着物を着た30代位の女がやってきた。
「この組を担当するガイドです」
色白で一重の切長の目、長い髪は後ろでまとめられ、朱色の口紅が鮮やかで、小股が切れ上がったいい女という感じだ。
「すっごい、いい女ですね」
思わず俺は隣の老人に囁いた。
その老人は、他の皆が思い思いの洋服に着替えているのに、死装束姿のままだった。棺に着替えを入れてもらえなかったということか……。
「え? そう? わたしには老婆に見えるがね」
老人が答える。
すると、ガイドの女が俺たちの方をキッと睨んだ。
最初のコメントを投稿しよう!