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3.孤独死
俺たちはガイドに導かれ、現世に戻った。
最初に訪ねたのは、死装束のままの老人の部屋だった。
そこはボロボロのアパートの2階で、ここで老人は孤独死したんだという。なるほど、孤独死だから身内がおらず、死装束のままなのかと妙に納得した。
「石田さんは家族写真だったね」
ガイドが書類を見て確認する。
「はい。離婚した妻と息子との思い出の写真が1枚だけあるんです」
ガイドは俺たちに向かって、「ここからは石田さんと私で入るから、あんた達は外で待っていておくれ」と言うと、二人は空中に浮かんでアパートの2階へと上がって行った。
それで、俺たちも真似してみると簡単に浮いて、アパートの2階の窓の外から中を覗き込めた。死人というのは便利なものだ。
石田さんの部屋は、畳に人型にしみができた壮絶な孤独死現場だった。ちょうど特殊清掃の人が掃除に入っているようで、防護服に防護マスクにゴーグルという出立ちの清掃人が二人、作業を始めていた。
彼らには俺たちは見えないようだ。
「やっぱ、やばいですね、社長。孤独死って……。こういう死に方はいやだなあ」
若い男の声がした。社長と若手のコンビらしい。
「おい、しゃべってないでさっさと作業しろ。それと家族写真があったら、それは処分しないでくれって息子さんから言われてる」
社長と呼ばれた中年の男が言った。
「そうなんすか」
若い方が答えた。
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