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2022年12月1日(木) 雪ちゃんのクリスマス
今日は2022年12月1日 木曜日です
アドベントストーリーズ 第1の物語の扉を開きましょう。
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12月23日の夜、雪ちゃんはワクワクドキドキしながら待っていました。
誰を? もちろん、サンタさんを、です。
でも雪ちゃんの感じているドキドキは他の子達が感じるような、プレゼントを待つドキドキとは違うのです。
その訳は昼間、学校でクラスメイトの誠くんに
「サンタなんかいないんだよ! プレゼントはママやパパが買ってるんだ! だって俺が前、プレゼントを楽しみにしてたら袋に指のロゴが入ってたんだぜ。
〇〇ハンズで買ったんだ!」
と言われたからです。
まあ、子供なのに現実を知らされて! え? お約束ですって? まあ、そう言わずに。
と言うわけで、雪ちゃんはサンタさんを見ようと、眠らずに待っていた、つもりだったのですが! いつの間にか眠ってしまいました。
夜中、雪ちゃんがふと目を覚ますと、曇りガラスの窓からでもわかるようなまばゆい丸い光が着地し、その光が広がったのです。
―絶対にサンタさんのそりの光だ!ー
そう思った雪ちゃんは足音を忍ばせて1階に下り、裸足のまま玄関から出ました。靴を履いていたら、サンタさんを見逃してしまうかもしれないと思ったのです。
雪ちゃんの家の前にあったのは、そりではなくUFOでした!
そして、そこから出てきたのは銀の体に丸い顔、黒いアーモンド型の目をした人でした。雪ちゃんはびっくりしました。だって、それは前に超常現象の特集番組で見た、「グレイ」という異星人の姿そのものだったのですから!
「ん? 起きちゃったかぁ、ホウホウホ~、メ~リ~クリスマ~ス!」
グレイが雪ちゃんを見て目を細めて話しかけました。
「グッ、グレイさんが日本語しゃべった~!」
雪ちゃんは悲鳴を上げました。
「全世界の言葉をしゃべれるよ。世界中にプレゼントを配るんだから」
「サンタさんなの? グレイさん、お声がお兄さん! プレゼントをくばるふりして地球を「しんりゃく」しにきたの?」
「ハァ~、出たよ! 毎年1回は俺ら全員どこかしらで起きてる子に必ず言われるんだよな。大人の誤解のせいだ」
グレイは、いえ、グレイのサンタさんは悲しそうにため息をついています。
「ほんとにプレゼントくばるだけ?」
「うん。だってサンタクロースだもん」
「プレゼントはサンタさんが作ってくれてるの? あのね、まことくんがね、プレゼントはパパとママが買ってるんだって言ってた」
「誠くんに教えてやんな。地球のお店はサンタさんが作ったおもちゃを販売してるのよってな」
「ほんと?」
「ああ。業務提携って言うんだけど、雪ちゃんにはまだわからないよな」
「ぎょうむていけい」
「今度サンタさんを疑ってくる奴がいたら、お店はみんなクリスマス星のサンタさんからおもちゃをもらってて、クリスマスになると特に豪華になるって言っとけ」
「サンタさん、いっしょにお写真とって」
「ダメだ。カメラ通すと俺達の体は粒子、光の粒々として写っちまって証拠にならねえ」
「なんだ」
「いいじゃんか。会えたんだから。雪ちゃんが知ってりゃいい話だろ? はい。欲しがってたマリーちゃん人形。まぎれもなくクリスマス星のメリークリスマス社社員の手作りだぞ。念のためにMCシール貼っとくから、このまま学校の友達に見せるんだぞ。少しは違うかもしれねぇ」
翌日、雪ちゃんはグレイのサンタのお兄さんからもらったお人形をクラスのみんなに見せて、言われた通りに話しました。
やっぱり信じてもらえませんでしたが、もういいのです。
会えたから。
雪ちゃんのクリスマス おわり
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