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「大丈夫だけど、そんな高級そうなお菓子悪いわ」
幸樹はすでに貰う気で、断ろうとする私を軽く睨んだ。
「私、チョコレートが苦手で貰ってくれたら嬉しいわ」
「じゃあ、遠慮なく……ありがとう」
幸樹は小さな箱入りのチョコレートを受け取ると、嬉しげにリボンをほどき始めた。
「幸樹君。いい子ね」
「ありがとう。家では本当にやんちゃで」
「あら、男の子はそれくらい元気じゃなくちゃ。それに……イジメなんかしなさそう」
「えっ」
さらりと夕夏が口にした言葉が胸に深く突き刺さった。
「いじめの張本人なのに『いじめられてるのに何で学校に来られるの?』なんて、絶対に言わなさそう。ねえ?」
心臓を鷲掴みされたみたいに身震いした。
「おばさん、何で知ってるの?」
「幸樹?」
顔面蒼白の幸樹が夕夏を見ていた。一目で様子がおかしいのが分かる。
「知ってるって何の事?」
夕夏が優しく問いかけた。
「僕、少し前からクラスでいじめられてるんだ」
「えっ。何で言わなかったの」
「だって、ママ」
私のお腹をちらっと見た。私の体調を気遣って、ずっと一人で我慢していたらしい。
「ごめん。ごめんね、幸樹」
「……僕もそう言われたんだ。ひどいよね」
「……そう、ね」
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