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「ママもいじめられた事ある?」
「ママは……ないわ」
「おばさんは?」
「幸樹! そんな事聞いたら失礼でしょう」
夕夏がどんな表情をしているか怖くて見られなかった。
「おばさんはあるわよ」
心臓が早鐘を打ち、汗がどっと出た。
「大丈夫? 凄い汗よ」
頷くのがやっとで、ハンドタオルで顔の汗を拭いた。
「その時はどうしたの?」
「先生に相談したわ。そしたら、クラス集会で私へのいじめを議題にされて、いつの間にか私が悪い事になったわ」
「何で? おばさん、悪かったの?」
「分からないの。いじめてきた子は、ちょっとからかっただけだって」
「えー! ひどい」
「でも、あなたには味方になってくれるママがいるじゃない。ねえ?」
「え、ええ」
突然お腹を激しく蹴る子をなだめる様にお腹をさすった。
「家族がどんな人達なのかお腹の中で聞いているのね」
「え?」
バスがゆっくりと速度を落とした。数名の乗客が出口に向かって歩き出す。
「私、ここで降りるから……いいママになってね」
夕夏はバスを降りて行った。
「ねえ、ママ。あのおばさん怖かったね。本当はママがあのおばさんにいじめられていたんじゃないの? このチョコ、何か変な味するし、もういらない」
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