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あるじに捨てられた最後のひとり
私はついに最後のひとりとなった。
先ほどまで励ましあった友は、今、風に流され落ちていった。
冷たい風が、細い枝にしがみつく私を揺らす。これほどまでに風を恨んだことはない。
わかっている。恨むべきは風ではない。
恨むべきは、これまで私を支えてきてくれた主。
主は、私がもう役に立たないことを知ると、固く結ばれていた絆をいとも簡単に断ち切ったのだ。
昔、私と主を結んでいた絆は、この冷たい風よりもっと激しく恐ろしい暴風雨がやってきても、揺らぐことはなかった。
私は何も恐れることはなかった。私と主は、確かに結ばれていたのだから。
人々は、ここに主がいることをいつも忘れていた。特にこの冷たい季節は完全に忘れさられている。
主の存在を人が認めるのは、春のひと時だけ。私が生まれる前のこと。
その僅かな時、人々は、主の側を通り過ぎるたび「きれー」「やばすぎ~」と感嘆の声をあげる。
主の周りには人々が集い、飲めや歌えやの大騒ぎ。
が、その喧騒は長く続かない。
騒ぎが収まるころ、私たちは生まれた。人々は私たちが生まれると、あからさまに失望の顔を見せる。
生まれたときから私たちは、人に忌み嫌われていた。
それでもよかった。
なぜなら、主と私は固い絆で結ばれているのだ。どのような嵐も引き裂くことはできない絆が。
私は、ただの桜の葉にすぎないけれど。
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