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質素な丸太づくりの小屋であったが、まだ新しく、中に入ると木の匂いをたっぷりと含んだ空気が風をうけて動いた。
イワンは仲間たちとともに、思い思いの場所に画材道具を置き、そして『さて、どうやってこの小屋を配分して使うべきか』と思案する。
正午過ぎの鋭い光が小屋の窓や隙間から差し込んだ。
エフィーム(愛称フィーマ)とニコライ(愛称コーリャ)とレオニード(愛称リョーニャ)は、リーダー格のイワンにもの言いたげな視線を向けた。
「われわれには好ましい場所だ。フィーマの父君に感謝しなければ、な」
イワンは満足げにそれらの視線に応えた。エフィームは目に見えて元気になる。この農村の地主がエフィームの生家なのだった。
広大な森と農村の風景。ロシアの短い夏を謳歌するかのように、さわさわと鮮やかな緑が光を放ち、鳥たちのさえずりが響きわたっていた。
こうなると、もう小屋の中で安らいでいるわけにはいかない。
四人はさっそく、付近を散策するために外に出た。とは言っても画学生。持つべきものは持っている。
片腕に画架を抱え、片腕に画材一式を詰め込んだ大きな鞄を提げて闊歩する四人の青年たちを、農民たちは驚きの目で見ていた。この地方では相当に珍しい光景なのだろう。
【※ロシアの名前の愛称は分かりにくいと思いますが、会話文のみ愛称で書きたいと思います。】
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