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このようなあふれる光、穀物畑の波打つ姿、真っ白な綿毛雲を浮かべた青い空、そこここに屹立し枝を張る樹木、見晴るかす地平線、すくまったように群生する果樹園、粗末ながら人の生活の息吹のする家々。
サンクトペテルブルグでは見られない光景に、ロシアの大地の広大無辺なることを全身で感じとった若き画家たちは、早くも我を忘れた。
いったいどこでスケッチを始めようか。どこもかしこも素晴らしくて、逸る心を抑えられない。日取りは十分にあるにもかかわらず。
しばらくすると、沼沢地に差しかかった。ここで、四人の意思は決まった。ちょうど夏の陽を受けて輝く水面に、生い茂った木々の葉が覆いかぶさって、その光と影に満ちた美は息を飲むほどだった。
彼らはひたすらに光を求めていた。それは彼らが反感を隠せない、壮大でものものしいイタリア絵画の対極にあるものでもあったのだ。
どのくらい時間が経っただろう。この場には似つかわしくない音が鳴った。盛大に腹を鳴らしたのは誰だ。
「リョーリャ、君だな」
四人のうちでいちばん太っているレオニードがやり玉に挙げられた。レオニードは否定する。
「すまない。俺だ。皆の集中力を阻害したことは詫びる。だが、俺はもう我慢ならない」
しかつめらしくニコライが述べ、その後すぐに自分でぷっと噴き出した。
「腹が減っては戦はできぬ。そろそろ食事にしようか」
笑ってイワンが答えた。
「この近くに、俺のよく知っている百姓頭の家がある」
地主の息子、エフィームが応じた。
「子どもの頃から知り合いなんだ」
「それはちょうどいい」
イワンは答え、画材を片付け始める。
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