1 【黒】魔女じゃないのに

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 コーラルピンクよりも少し薄い色をした石の建物が並ぶのは丘の方、港のほうにはミルク色、平原から森へと続く道があるほうの石は灰白色と、石造りの町は場所によって石の色が違う。  屋根の色はオレンジやチョコレート、クリームを混ぜたようなストロベリー色と、おいしそうな色が多い。街並みの配色はカラフルなプチケーキの箱の中身に似ている。  町中に張り巡らされた水路には澄んだ水が豊富に流れ、その水によって緑が生い茂り、鳥や動物達の憩う姿を所々で目にすることができた。  新鮮な水を求め、町に数か所ある石で囲まれた湧き水の水汲み場へと人々が集まり、その木陰の下で楽しそうにお喋りする声が私の耳にも届く―― 「ねえ、森の一軒家に住み始めたっていう怪しい子はまだいるの?」 「ああ。虫を集めたり、雑草を育てたりしているんだぜ」 「虫を? 虫なんてどうするのかねぇ……」 「食べるんじゃないかい? それか呪いの材料かも」 「シッ! 森から魔女が来たぞ!」    魔女――私は町の人達から魔女と呼ばれていた。  けれど、自分では魔女だとは思っていない。
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