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籠の中には仕立て屋からの依頼で染めた布がたくさん入っているだけで、これらすべて町のみんなの服や装飾品へと変わり、人気も上々。染めた布の評判は悪くなく、依頼品を持っていくと次の依頼を頼まれるくらいだった。
「でも、仕立てたドレスに布を染めた人の名前が書かれているわけじゃないし、どうやって誤解を解けばいいのかな」
町の人達の生活に貢献しているはずなのに私のことをなぜか魔女呼ばわり。
王都から引っ越してきて半年、私のなにがいけないのかと悩む日々を過ごしている。
大通りを歩きながら鬱々と考えていると、帽子屋から出てきた女性が店員と明るい声で会話をしているのが聞こえてきた。
「この帽子は入荷したばかりだったんですよ」
「ええ。すぐにわかったわ。以前、来た時には置いてなかったから。このリボンが特に気に入ったわ。また来るわね」
「ありがとうございます。またどうぞ!」
帽子屋を出た女性は新しい帽子をかぶった自分の姿をガラス窓に映し出し、何度も角度を変えて眺めていた。一頻り眺め終えると満足したのか、歩き出し、帽子を飾るリボンをなびかせた。
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