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女性が気に入ったという葡萄色のリボンは私が染めた布で作られている。気に入ってもらえて嬉しいけど、女性は私をチラリとも見ず、帽子をかぶった女性が次に見たのは帽子屋と同じ並びにあるキャンディ屋だった。
「コットンキャンディの列はこちらでーす!」
キャンディ屋の看板娘の明るい声が大通りに響く。
彼女の珊瑚色の髪を飾る花は布でできていて、花の髪飾りは髪の色と同じ珊瑚色。珊瑚色の花は同色の髪の色に溶けて、髪に花が咲いているのではと錯覚するほど、花の妖精のように可愛らしい。
「まあ、マリエッタ。新しい髪飾りかしら?」
「素敵だこと。とても似合っているわ」
「君の髪の色にぴったりだね。マリエッタちゃん、可愛い! 最高!」
みんなから称賛される髪飾りはとてもいい出来栄えで、マリエッタのためにあると言っても過言ではない。でも、その髪飾りの布は私が染めたものだとは誰も気がつかない。
実はマリエッタの髪をイメージして染めたんです!
なんて言えないし、そんなことを言った日には魔女と呼ばれるだけでなく、変態呼ばわりされるからもしれない。
変態魔女――これは辛い。
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