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藤原と式野
1
「気になる点が幾つもあるんだけど、ヘビコウって人は……霊能力者なのか?」
いつもの居酒屋には式野と藤原がいる。藤原は式野の出来上がったばかりの原稿を机の上に置いてから静かに尋ねた。
「本人は否定してますけどね」
「聞くからに怪しいなあ。どういった経緯で友達になったんだ?」
「友達、と思ってくれるなら嬉しいんですけどね。話の成り行きで……」
「まさか好きになったり……してないよな?」
あまりの真剣な顔に式野は呆れを通り越し、笑ってしまう。
「相手は既婚者ですよ? ありえません。結婚指輪が光ってました。話は戻りますが、他に気になる点ってなんですか?」
「そこのF県の話。M村か?」
式野が頷くと、藤原は眉間に皺を寄せて顎に手をやり、考え始める。
「引っ越してくる人間が多いんだよな」
「詳しくは分かりませんけど」
「そうか……。いや、友人がそこに居るかもしれなくて……。あぁ、それよりもこの話を調べていたSさんとは、その後もちゃんと連絡が取れてるのかい?」
「いえ。お互い用事がある時にしか連絡していないので、とやかく言うのも良くないかと思いまして……」
藤原は「そうか」とビールを一気に飲み干す。
「今回は俺の奢りだ。面白い話を教えてくれてありがとう。……薫ちゃん。兎に角、そういうのを詳しく調べるときは気をつけろよ。話をするだけでも霊が寄って来るって言うんだからな」
「ホラー作家なんで心構えは出来ています」
式野の強気な言葉に藤原は苦笑してレジの方へと向かって行った。
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