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藤原は、急いで二三に電話をかける。
「非番なんスけど」
「お前、前に言ってた事件内容を覚えてるか?」
「えー? 覚えてないッスよ。どんなのでしたっけ?」
「F県M村の不審死。顔に手の引っ掻き傷、両方が左手の」
二三は、暫く沈黙していたが、不意に「あー」と間の抜けた声を出す。
「佐々木 文義? 自傷行為の末、首吊りでしたっけ?」
「そう、それだ。お前、遺体の顔を覚えているよな?」
「覚えてるッスよ。自分、アレ見た時、競馬とか、パチンコに有り金全部溶かして絶望したのかなって思ったくらいッスよ。だとしても、相当演技派だなって思いますけど、それがどーしたんすか?」
「傷の深さは?」
「結構だったと思います。だって血だらけでしたもん」
「それを抉れたと表現出来ないか?」
「あー……。そりゃ……。うーん……、どうでしょ。覚えてるけど、抉れたとか言われたら、写真をもう一回見ないと自信無いッスね」
「畜生。調べたいのに酒を入れちまった」
「じゃあ、明日ッスね」
のんびりとした二三の言葉に苛立ちながらも藤原は足を速め帰宅する。そして改めて式野が話をした内容を伝える。
「皮田?」
藤原の話を聞き終えた二三が繰り返す。
「この前の……、マチ針のばあさん家も皮田じゃなかったでしたっけ。たしか、あそこの婆さんも自分の顔、滅茶苦茶に引っ掻いていたじゃないッスか」
それを聞いた藤原は急いで自分の手帳を確認する。事件の内容をメモしているため、数ページ捲れば、情報はすぐに出てくる。
二三の言った通り、そこに名前が記録されている。
「でも、あー。間違えたかも。類似性はあるけど、F県M村じゃないし」
「あそこの一家は引っ越したと言っていた。前の住所を調べよう」
「調べてどうするんスか?」
「もし、そこの家に住んでいたのならば、佐藤シズコもこの前の男性と同じ被害者なのかもしれない」
「加害者は誰ッスか?」
藤原は少し考えた後、一つの結論を導き出した。
「土地か?」
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