男ありけり

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男ありけり

──昔男ありけり。 名を、在原業平(ありわらのなりひら)と言う。 父は、皇子阿保親王。母は、桓武天皇、皇女伊登内親王。皇家の出なり。 時は朝露のごとく。 政変重なり、男、在原朝臣(ありわらのあそん)姓を賜る。 臣下へ下るこの無情、業平が才を開花させり。 して、詠む歌の哀艶なる調べたるや。 男、調べのごとく禁断の恋へ歩むなりき……。
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