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今日の将大は、クールビズの手本みたいな服装に、レトロなフレームの伊達眼鏡を合わせている。
ふわふわとパーマをあてた髪が金色でなければ、電車の中で乗客たちの詮索がましい視線を集めることもなかっただろう。
スタイルと姿勢の良さが、反ってミステリアスな雰囲気を増幅させている。
それにしても、いつの間に名刺なんて作ったのだろう。
「確かに機会がないと、なかなか乗りませんからねぇ」
はは、と愛想笑いをして、東谷はどんぐりのような目で私たちを見比べた。
「すると、お二人はご兄妹で?」
将大の母、青蓮尼の弟子は皆、白川姓を名乗る。だから、今までもよく誤解を受けた。
「いいえ、違います」
「まあ、従兄妹みたいなもんですわ」
その度に繰り返してきた返答だ。でも条件反射みたいに応えた将大に、分かっていても、がっかりする。
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