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2月12日②
廃棄物倉庫は、病院本館の裏手だ。
ここには様々な一般廃棄物と並び、感染性廃棄物の保管庫がある。
カギを開けてみると、四畳半ほどのスペースの中央に、オレンジ色のハザードマークが描かれた段ボール箱が、五つほど取り残されていた。
「ホントだ、変だね」
「でしょ。最初から持っていってもらえなかったのか、あるいはちゃんと回収されたのに、後から戻されたのか」
「どっちにしても……何で?」
田仲が聞くと、三田村も首を傾げた。
三田村は田仲より三つほど年嵩で、こないだ孫に古稀を祝ってもらったと聞いた。だが七十とは思えぬほど、パワフルかつ機敏な仕事をする。家庭の事情により短時間勤務のため田仲がリーダーを担っているが、何かあれば最初に相談する、頼れる存在だった。
だが職歴の長い三田村でも、初めてのことだという。
「木田さんに聞いてみる?」
廃棄物収集運搬を請け負う豊井原産業㈱の担当者である。彼は収集運搬車のドライバーであり、営業担当も兼ねていた。業務上の接点も多く、昔からの付き合いだ。
「職員さんに報告するほうが先かな。そっちから聞いてもらおう」
田仲はそう判断した。大ゴトになってもイヤなので、正規のルートで対応したいと思った。病院側には、すでに木田から報告が上がっているかもしれない。
病院側の担当者は総務係長の須井という男で、どうも高圧的なところがあるので、田仲は苦手だった。
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