553人が本棚に入れています
本棚に追加
「あのう、この会社に藤城美希は私一人ですが、似た名前の方ならいますので、お呼びしましょうか」
そう言ってビルへ俺を誘導しようとした。
俺は慌てて「大丈夫です、俺の勘違いでした、失礼します」と言ってその場を後にした。
彼女はいつまでも俺の後ろ姿を見送ってくれていた。
その彼女の姿がずっと脳裏から離れなかった。
俺は望月を呼び出した。
「彼女に会った」
「えっ、親父さんの言いつけ破ったのか」
「いや、お前の名前を借りた」
「はあ?どう言う事だ」
望月はムッとした表情になった。
「お前の名前で彼女を呼び出した」
「親父さんの会社まで行ったのか」
「ああ」
「それで会えたのか」
「会えた、俺、彼女に惚れた、結婚する」
望月は絶句した。
「おい、話が飛躍しすぎだろう、彼女はお前を俺だと思ってるんだよな」
「そこまで、印象づけていないよ」
最初のコメントを投稿しよう!