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 そう思った時、ようやく気付いた。  歪んでいるのは絵や風景ではない。自分の目だ。  目だけではない。体に異常を来たしている。視界がぼやけ、体の中心がずれたようになり、ぐらついた。指の先がビクビクと痙攣している。体が麻痺しているようだ。 「あら、もう効いてきたの? 今度のお薬は随分とよく効くのねぇ」  夫人は東堂さんの顔色を伺いながら言った。  油断していた。  まさかそんなことまでするとは予想もしなかったのだ。  おそらく自分が飲んだお茶には、何かの薬が入っていたのに違いない。おそらく強烈な睡眠剤だろう。  では同じお茶をんだ夫人は何ともないのか?  飲んだのは私だけなのか。  あの時だ。夫人はお茶の葉を載せた匙を手で覆い隠していた。その中に薬のような物を仕込んでいたのだ。  気づいた時にはもう遅かった。  東堂さんは逃げようと思い、立ち上がろうとしたが、足がふらついてその場に突っ伏してしまった。
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