セクハラとパワーショベルの記憶

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セクハラとパワーショベルの記憶

「セクハラ男退治の白井さん」~「三千子」外伝 ◆セクハラとパワーショベルの記憶  お昼休憩、自分のデスクでお弁当を開くと、  同僚の由美子が「今日は私もお弁当なの」と言って、椅子を寄せてきた。  女性社員は他にも多くいるけど、由美子は数少ない私の友人だ。私、白井さゆりは皆から少し距離を置かれている。いや、気味悪がられているのかもしれない。  でも皆が気味悪がっているわけではない。総務の藤田さんや、経理の小山田さんは普通に接してくれる。  それにはある理由がある・・ 「ねえ、さゆりさあ」由美子が卵焼きを食べながら切り出した。 「なあに?」  食べかけの卵焼きを飲み込んだ。 「本当にあの時のこと憶えていないの?」由美子はそう訊ねた。  私は「あの時の事は、思い出せないの」と返した。 「あの事」というのは、「あの事件」のことだ。  私は警察に事情聴取等をしつこいくらいに受けたが、全く記憶にない。  けれど、事件の結果は知っている。  セクハラ男の花田課長の事件だ。あの男は死んだ。
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