冬の風邪

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冬の風邪

12月の寒い夜にドライブに出た。 軽トラックを改造したキャンピングカーだから、車中泊が出来る。 山の中で眠くなり、車を停めて毛布を被り寝る事にした。 しかし街灯も無い漆黒の闇の中、怖くてなかなか寝付けない。 深夜に誰かがドアをノックした。 見ると若い女性が立っている。 「どうされましたか?」 はい、道に迷い困っています、一晩泊めて頂けませんか。 寒そうに震えている、女は真っ青な顔をしていた。 お入りください、ラーメン有りますよ 軽自動車ながら小型冷蔵庫や台所が有り水も出る。 屋根の部屋には一人は寝られるスペースが作って有る。 ラーメンを夢中で食べる女にホットミルクを出した。 「ありがとうございます、何とお礼を言って良いやら」 「いえ、上のスペースで寝られますよ、毛布も有るから寝てくださいね」 「本当に、ありがとうございます」 それから女は、すぐに寝た。 毛布を渡したから、さすがに毛布無しでは寒い、すぐに寒気がした。 冬の風邪? そのまま、すぐに眠ってしまった。 朝に目を覚まして起き、上に寝ている女に声をかけたが返事が無い。 見れば誰も居ない。 金の延べ棒が置いてあった。 1キロらしい、調べたら700万円にはなる。 紙切れが有った。 (お礼です) と書いてある。 しかし風邪をひいたようだ頭が痛い。 良い金儲けだ。 まさかとは思うが、夜に昨夜と同じ場所にキャンピングカーを泊めて待つ。 するとトントンと誰かがドア叩く。 見れば昨夜とは違う女だ。 「どうされましたか?」 「道に迷い困っています」 「はい、はい、中にお入りください」 ラーメンを作りホットミルクを出した。 朝には女の姿は消えて金の延べ棒が置いてあった。 「しめしめ、二晩で1500万円」 風邪はひどくなりめまいがするが、大切な金儲けだ。 熱は有るが我慢することにした。 それから一週間後の朝に彼は肺炎になったのか車内で発見されたが、亡くなっていた。 バッグには金の延べ棒が8枚入っていた。 死に顔は笑顔だった。
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